○吉川松伏消防組合特殊災害警防活動計画
令和元年11月8日
消防長決裁
1 目的
この計画は、吉川松伏消防組合警防規程(平成25年消防本部訓令第3号。以下「警防規程」という。)第2条第5号に定める特殊災害のほか、爆弾を使用したテロ災害を含め、大規模な被害をもたらす特殊な災害(以下「特殊災害」という。)が発生し、若しくは発生するおそれがあり、その被害の拡大が予想される場合における消防機関の警防活動について定め、人命救助と被害の軽減に努め、もって住民の安心・安全を確保することを目的とする。
2 対象事故等
特殊災害は、原因物質等の人体への影響度などから多数の傷病者が発生する可能性が高く、二次被害の危険性も高くなることが予測されるなど、原因物質等により発生する災害の性質が異なることから、この計画の対象とする特殊災害事故の種別を次のとおり区分するものとする。
(1) 放射性物質災害及び放射性物質テロに係る災害
(2) 生物災害及び生物テロに係る災害
(3) 化学災害及び化学テロに係る災害
(4) 爆弾災害及び爆弾テロに係る災害
3 部隊編成及び出動計画
4 消防本部の対応
災害情報等から特殊災害と判明し、又は疑われる場合は、警防規程第3条第2項の規定に基づき、災害の規模等に応じ、警防本部の全部又は一部を機能させる。また、同規程第4条第2項の規定に基づく作戦会議を置き、次に掲げる事項を行うものとする。
(1) 現場指揮本部との災害情報の共有
ア 災害発生場所
イ 特殊建物警防計画
ウ 救助活動に係る情報
エ 避難に係る情報整理
オ 傷病者に係る情報
カ 原因物質の種類、量、性状等
キ 活動隊の活動状況把握
ク 救急搬送の状況
(2) 関係機関との連携
ア 消防(近隣応援・県下応援・緊急消防援助隊)
イ DMAT・医療機関
ウ 警察機関
エ 市町村への情報
オ 自衛隊
カ 保健所(生物災害時)
(3) その他の関係機関との連携
ア 公益財団法人原子力安全研究会 放射線災害医療研究所
イ 感染症指定医療機関(生物災害時)
ウ 公益財団法人日本中毒情報センター(化学災害時)
エ 河川・下水道管理部局
(4) 報道機関
吉川松伏消防組合消防広報規程(平成21年消防本部訓令第3号)第15条の規定に基づく報道対応マニュアル(平成21年管理者承認)及び危機管理対応マニュアル(平成21年管理者承認)により対応するものとし、次に掲げる事項を厳守するものとする。
ア 活動の支障になる場所や安全が確保できない場所へのマスコミ関係者の立ち入りを禁止する。
イ 隊員個人によるメディア対応は行わない。
ウ 対応窓口を警防課の一本化とする。
エ 未確認情報等は明確にその旨を伝える。
オ 警察機関の捜査に支障を来たさないよう留意する。
カ 複数の機関が現地調整所を設置した場合はマスコミ発表にあたって調整を行う。
5 指令室の対応
119番通報等において、放射性物質保有施設や輸送における事故、多数の傷病者や不審物、異様な臭気等を通報時に受信した場合は、特殊災害の判断材料であることとし、次に掲げる事項を念頭に受信する。
(1) 放射性物質災害の発生が疑われる場合の聴取事項
ア 事故発生場所の特定、範囲及び詳細
イ 保有物質、輸送物質の特定及び詳細
ウ 容器などの破損、漏洩の有無
エ 要救助者、傷病者の有無、人数及び症状
(2) 生物又は化学災害の発生が疑われる場合の聴取事項
ア 事故発生場所の特定、範囲及び詳細
イ 要救助者、傷病者の有無、人数及び症状
ウ 事故発生等に係る原因
エ 漏洩等している物質の名称、漏洩量、毒性、性状(液体、気体)、致死率
オ 住民、従業員等の避難状況
カ 現在までの事故経過
キ 不審な容器、収容物、散布機等の残留物の有無
ク 不審者、不審物の目撃情報や犯行予告の有無
ケ その他、発生場所周囲の異臭、異常な状況
(3) 爆弾災害の発生が疑われる場合の聴取事項
ア 発生場所の特定、範囲及び詳細
イ 要救助者、傷病者の有無、人数及び症状
ウ 爆発被害の範囲(火災の発生、建物被害の状況等)
エ 住民、従業員等の避難状況
オ 現在までの事故経過
カ 不審な容器、収容物等の残留物の有無
キ 不審者、不審物の目撃情報や犯行予告の有無
ク その他、発生場所周囲の異常な状況
6 出動指令
(1) 指令室は、119番通報等受信時において、放射性物質、生物剤、化学剤又は爆弾等の漏洩、発散、放出又は使用等に関する内容を聴取した場合は、次のとおり区分するものとし、特殊災害の出動指令前に予告指令等に努めるものとする。
ア 放射性物質災害又は放射性物質災害の疑い
イ 生物災害又は生物災害の疑い
ウ 化学災害又は化学災害の疑い
エ 爆弾災害又は爆弾災害の疑い
(2) 指令室は、前号の出動指令を行うときは、通報者から必要な情報を聴取のうえ、出動する部隊に支援情報を積極的に提供するものとする。
7 現場指揮本部の設置
災害現場の最高指揮者は、現場指揮本部を設置し、警防規程第36条第2項の規定により情勢に適応する警防部隊の配備を定め、災害活動が最大の効果を挙げられるよう努めるものとする。現場指揮本部は、情報収集、広報、避難誘導等、周囲の状況を合理的に判断するものとし、次に掲げる事項を留意し指揮活動にあたるものとする。
ア 現場指揮本部は、災害現場及び活動部隊が把握でき、各指揮所等との連絡が容易で二次災害が発生する危険性がなく通信障害のない場所に設置すること。
イ 出動各隊の統括を図り、活動状況を迅速的確に把握するものとし、消防部隊の増強又は縮小は、時機を逸することなく行うこと。
ウ 災害状況、消防部隊の消防力を見極め、遅滞なく各種協定などによる応援要請、連携を行うこと。
エ 災害局面に応じ各指揮所を活用し、円滑に災害活動における任務の統制を図ること。
8 各指揮所の設置
(1) 前進指揮所の設置
特殊災害、警防活動の状況により現場指揮本部の機能を補完するため、必要に応じ局面指揮者を指名のうえ前進指揮所を設置し、次に掲げる事項を留意し任務にあたるものとする。
ア 現場指揮本部の設置に準じた場所に設置すること。
イ 災害局面に応じた進入統制など、現場指揮本部からの下命事項を遵守すること。
ウ 指揮下にある活動各隊の統括を図り、活動状況を迅速的確に把握すること。
エ 現場指揮本部との連絡を緊密とすること。
(2) 救急指揮所の設置
特殊災害により傷病者が集団的に発生又は発生するおそれがあることから、現場指揮本部における救急活動の指揮を補完するため、必要に応じ救急指揮者を指名のうえ救急指揮所を設置し、次に掲げる事項を留意し任務にあたるものとする。
ア 現場指揮本部の設置に準じた場所に設置すること。
イ 救護所のトリアージなど、現場指揮本部からの下命事項を遵守すること。
ウ 指揮下にある救急隊等の統括を図り、傷病者全体を迅速的確に把握すること。
エ 収容医療機関を把握すること。
オ 現場指揮本部との連絡を緊密とすること。
9 活動区域
活動区域 (ゾーニング) | 基準 |
危険区域 (ホットゾーン) | 原因物質に直接接触する可能性のある区域 物質が不明な区域、原因物質が確認できる区域、人が倒れている区域、小動物の死骸や枯れた草木が確認できる区域、曝露者の吐しゃ物や血液等と疑われる区域など |
準危険区域 (ウォームゾーン) | 直接的な危険性は低いが二次汚染の可能性のある区域 曝露者又は曝露が疑われる者を退避させる区域など |
安全区域 (コールドゾーン) | 直接の危害が及ばない区域 危険区域及び準危険区域以外の区域 |
ゾーニング設定前に二次曝露等の防止のため、特殊災害現場の風向、風速、地勢に応じて進入統制ラインを設定 |
10 災害現場活動
特殊災害の現場活動は、原則として次の事項を活動方針として、警防活動にあたるものとする。
ア 人命救助を最優先として、警察、医療機関及びその他関係機関と連絡を密にすること。
イ 放射性物質との遮へい及び屋内退避、化学及び生物剤等の排除、中和、除染等に努め、人命被害の拡大防止を図ること。
ウ 要救助者、傷病者等のトリアージを適切に行い、情報管理を徹底すること。
(1) 放射性物質災害
放射性物質災害時における警防活動は、主として災害情報の収集、要救助者及び傷病者の人数や症状の把握、住民への災害情報伝達や避難支援を担うこととなるが、通常の災害と異なり、特異性を踏まえた適切な安全管理が必要であることから、次に掲げる事項を主眼とし活動する。
ア 実態把握及び関係者の確保
イ 付近住民及び隊員の被ばく低減
ウ 被ばく及び汚染の防護
エ 活動環境の把握
オ 放射線防護措置
カ 活動区域の設定(ゾーニング)
キ 測定活動
ク 安全確保
ケ 関係機関との連携(応援要請)
(2) 生物及び化学災害
生物及び化学災害時における警防活動は、強い指揮統制及び関係機関との連携のもと、災害実態及び危険性を早期に把握し、活動隊員の安全を確保しつつ、被害の拡大防止と住民の安全確保を最重点に活動することとし、次に掲げる事項を主眼とし活動する。
ア 活動隊員に対する化学剤・生物剤の曝露防止(活動隊員の安全管理)
イ 被害の拡大防止(化学剤・生物剤の拡散防止及び活動隊員、被害者、資器材、救急車等を介した化学剤・生物剤の拡散防止)
ウ 活動区域の設定(ゾーニング)
エ 原因物質の早期検出(簡易検知)と危険性の把握
オ 要救助者の救助
カ 被害者の一次除染
キ 多数の傷病者に対する救急処置と医療機関への搬送
ク 活動隊員、使用車両・資器材等の除染
ケ 関係機関との連携
(3) 爆弾災害
爆弾災害時における警防活動は、人が集まる場所、イベント会場等を狙うなど、多数の傷病者が発生する可能性が高く、爆発発生後の建物等の倒壊やパニックにおける避難者同士の転倒などの二次災害発生の危険があることから、次に掲げる事項を主眼とし活動する。
ア 警察機関等関係機関との情報共有
イ 災害発生現場の安全性の評価
ウ 二次災害発生に対する活動隊員の安全管理の徹底
エ 住民等に対する避難誘導
オ 関係者、避難者からの情報収集
カ 活動区域の設定(ゾーニング)
キ 要救助者の救出
ク 爆傷の傷病者への応急処置及び医療機関への搬送
11 救急活動
(1) 特殊災害は、大規模な被害をもたらし多数の傷病者が発生又は発生のおそれがあるため、吉川松伏消防組合集団救急事故対策計画(平成23年消防本部訓令第3号)により対応するものとする。
(2) 特殊災害の事故種別により傷病者、隊員及び救急車両等への二次汚染のおそれが予測できることから次に掲げる事項を念頭に活動する。
ア 救急隊が先着したときは、不用意に特殊災害現場に侵入することを避け、情報収集及び現場広報に努める。
イ 傷病者の汚染拡大防止措置としてストレッチャーにビニールシート等を敷いておく。
ウ 救急車両の汚染拡大防止措置として救急車内をビニールシート等で被覆する。
エ 救急隊は傷病者及び周囲の環境に接触する場合は個人防護具の着装の徹底、必要により高レベルな防護服を着装する。
オ 必要により車内の除染を行う。
12 隊員の体調及び健康管理
(1) 特殊災害時の警防活動は、事故種別により特別な防護措置を備え、活動が長時間にわたる可能性があるため、次に掲げる事項に留意する。
ア 長時間に及ぶ活動に際し肉体的・精神的な疲労が考えられることから休憩や隊員の交代を計画的に行う。
イ 熱中症・脱水症の予防に配慮し、適宜、水分補給を行う。
ウ 隊員の顔色、表情、言動の変化を見逃さない。
(2) 特殊災害現場で活動した隊員は、息苦しさ、目の痛み、その他身体に異常を感じるときは、除染、応急処置等を実施し、医師の診断を受けるものとする。
(3) 特殊災害現場で活動した隊員の体調については、直ちに異常が認められない場合であっても、潜伏期間を考慮した経過観察を行い、必要に応じストレスケアを併せて実施する。
13 装備品の点検
(1) 特殊災害現場で使用する資器材については、吉川松伏消防組合消防機械器具管理規程(平成20年消防本部訓令第14号)第3章点検及び整備の規定により行うものとし、常に適正な運用ができるように努めなければならない。
(2) 特殊災害現場で使用した資器材については、速やかに点検を行い、化学、生物剤等が付着しているおそれがある場合は、除染を行い収納又は処分するものとする。
14 原因調査及び現場保存
治安、公安事件等として関連がある場合は、消防活動に係る破壊、除染、移動等は必要最小限として現場保存に努めるとともに、現場警察責任者と密接な連携の下、必要事項のみ調査を行い警察官に現場の引渡を行うものとする。
15 訓練
この計画の円滑な運用を図るため、警防規程第22条第2項第8号に規定する特殊災害訓練に基づき、適宜、関係機関等との連携を踏まえた組織的な警防活動の向上に資する訓練を実施するものとし、特殊災害に対する知識及び警防技術の向上に努めるものとする。
附則
この計画は、消防長決裁の日から施行する。