○震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い等に関するガイドライン

令和2年3月26日

告示第5号

第1 目的

東日本大震災では、給油取扱所等の危険物施設が被災したことや、被災地への交通手段及び通信手段が寸断されたこと等から、ガソリン、軽油、灯油等の燃料等が不足し、地下タンクから手動ポンプを用いた車両への給油・注油等、危険物施設での臨時的な危険物の取扱い及び避難所等の危険物施設以外の場所での一時的な危険物の貯蔵など、平常とは異なる対応が必要になり、消防法(昭和23年法律第186号。以下「法」という。)第10条第1項ただし書に基づく、危険物の仮貯蔵・仮取扱いが多数行われました。

このことを踏まえ、総務省消防庁において「震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い等の安全対策及び手続きに係るガイドライン(平成25年10月3日付け消防災第364号、消防危第171号消防庁国民保護・防災部防災課長)」が策定されたところです。

当消防組合においても、震災時等において臨時的な危険物の仮貯蔵・仮取扱いに係る安全対策、手続き等についての運用を定め、安全を確保した上で速やかに危険物の仮貯蔵・仮取扱いの承認を行い、迅速な災害復旧を図るために運用を定めるものです。

【想定される震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い形態の例】

①ドラム缶等の運搬容器による車両用燃料等の貯蔵

②変圧器の修繕、点検のため変圧器内部の絶縁油の抜取り等

③移動タンク貯蔵所から車両・重機等及びドラム缶等への給油・注油

④施設の改修、点検及び解体をするための残油の抜取り等

⑤電源確保のため、非常用発電機や仮設発電機への燃料給油

⑥救援物資等の集積場所で危険物を貯蔵(防災拠点及び各種防災備蓄倉庫等)

第2 安全対策等

震災時等の被害状況により、危険物施設以外の場所(少量危険物貯蔵・取扱所を含む。)での臨時的な指定数量以上の危険物の仮貯蔵・仮取扱いが想定される場合の安全対策に係る事項は、次のとおりとする。

1 共通対策

(1) 危険物の取扱所(可燃性蒸気対策)

・ 可能な限り屋外で行うこと。

・ やむを得ず屋内で行う場合は、可燃性蒸気が滞留しないよう換気に注意すること。

(2) 保有空地の確保

・ 危険物の規制に関する政令第16条第1項第4号の規定の例によること。

・ 保有空地の周囲には、柵、ロープ等を立てて空地を確保すること。

(3) 標識等の設置

・ 見やすい箇所に標識・掲示板を立て関係者に注意喚起を行うこと。

(4) 流出防止対策

・ 流出した危険物が拡散しない形状の場所を選定すること。

・ 危険物が流出する危険性がある場合は、吸着マットや簡易の防油堤等必要な流出防止対策を講ずること。

(5) 火気使用の制限

・ 保有空地を含め、危険物の貯蔵・取扱い場所での火気使用を禁止すること。

(6) 静電気対策

・ ガソリン等の第4類第1石油類を取り扱う場合は、危険物容器(ドラム缶本体、詰め替え容器)だけでなく、給油に使用するドラムポンプ等のアースも確保し、確実に静電気を逃がすこと。

・ 静電気による帯電を防止するために、危険物の貯蔵・取扱い場所には可能な限り金属類を置かず、どうしても必要な場合には当該金属類も確実にアース又はボンディング(導体同士を電線で接続すること。)を確保すること。

・ 絶縁性素材の用具は極力使用しないこと(遮光や防風にもビニール等帯電しやすい素材を用いることを避けること。)

・ 危険物を取り扱う作業者は静電安全靴の着用等、静電気対策を行うとともに、作業服を着脱した後には必ずアースされている金属等に触れて危険物の取扱い時における人体の帯電量を小さくしておくこと。

・ 作業場所にビニールシート等を敷く場合には、導電性の確保に留意すること。

・ 給油・移替え等の場合、その流速を可能な限り小さく抑える(充填の初期最大流速は1m/s)とともに、高所から危険物を放出してタンク壁面等に危険物が勢いよくぶつかる状況を避け、また充填後しばらく静置すること。

・ 第4類第1石油類以外の危険物を貯蔵し、又は、取り扱う場合であっても、可能な限り静電気対策を行うこと。

(7) 消火設備の設置

・ 取り扱う危険物に応じた消火設備(消火器等)を用意すること。

(8) 取扱い場所の管理

・ 危険物を取り扱う場所は明確に区分しておくとともに、作業に関係がない者の立入りを厳に禁ずること。

(9) 危険物取扱者の立会い等

・ 危険物の取扱いに際しては、可能な限り危険物取扱者免状保有者自身が取り扱うか立ち会うこと。

・ 危険物の貯蔵・取扱いの全体管理業務は危険物取扱に関する有資格者等専門知識を有する者が行うこと。

(10) 二次災害の発生防止

・ 余震発生、避難勧告発令時等における対応についてあらかじめ定めておくこと。

(11) 安全対策を講ずる上で必要な資機材等の準備

・ (1)から(10)で示した安全対策を講ずる上で必要となる資機材等を、当該場所以外の場所から調達する必要がある場合は、調達先・調達手順等についてあらかじめ定めておくこと。

2 危険物の取扱い形態に着目した特有の対策

1に示した危険物の仮貯蔵・仮取扱いに際して共通して講ずべき対策に加え、危険物の取扱い形態に着目した特有の対策は次のとおりである。

(1) ドラム缶等による燃料の貯蔵及び取扱い

・ 屋内においてドラム缶等による燃料の貯蔵を行う場合は、当該場所の通風、換気を確保すること。

・ ガソリン等の第4類第1石油類を、夏場の気温の上昇や直射日光等によりドラム缶等の温度上昇のおそれがある場所で貯蔵し、又は取り扱うことは、当該危険物の温度上昇及び圧力上昇により火災、流出事故の危険性が高まるため、厳に慎むこと。

・ ドラム缶等からの給油、小分けについては、可燃性蒸気の滞留防止の観点から、可能な限り屋外で行うこと。また、屋内で行う場合であっても壁2面以上が開放された場所で行うなど、通風・換気の確保された場所で行うこと。特にガソリン等の第4類第1石油類の給油・小分けに際しては、ドラム缶等の蓋を開ける前に周囲の安全や火気使用制限の確認を徹底すること。

・ 燃料の小分け等の危険物の取扱いを行う場所は、ドラム缶等が集積されている貯蔵場所から離れた別の場所に確保するとともに、取扱い場所の危険物量は可能な限り少なくすること。

・ ドラム缶等から自動車にガソリンを給油する場合、ガソリンが満タンになった場合に自動的に停止する機能がなく、さらに給油中にガソリンの液面の位置を把握することが困難であることから、過剰給油によりガソリンが給油口から溢れ出してしまう危険性があることに留意し、細心の注意を払って給油するとともに、静電気対策を含めた出火防止対策を十分に行うこと。

(2) 危険物を収納する設備等からの危険物の抜取り

・ 変圧器等の危険物を収納する設備について、点検、修理するために危険物を抜き取る場合は、大量の危険物が流出する危険性があることから、仮設防油堤の設置、漏えい防止シートの敷設等の流出防止対策を講じるとともに、配管の結合部からの流出防止対策として必要に応じてオイルパンを設置すること。

・ 危険物の流出量を小さくするために、1カ所の取扱い場所で複数の設備からの抜き出しを同時に行うことを避けること。

(3) 移動タンク貯蔵所等からの給油、注油等

ア 移動タンク貯蔵所から直接給油又は容器への詰め替え(危険物の規制に関する政令第27条第6項第4号イ及びロで認められている取扱いを除く。)を行う場合には、原則としてガソリン以外の危険物とするとともに、特に周囲の安全確保及び流出対策として次の事項に留意すること。

・ 危険物を取り扱う場所を明確に定め、空地の確保や標識の設置等を行うとともに、給油や詰め替えに関係ない者の立ち入りを厳に禁ずること。

・ 吸着マット等危険物の流出時の応急資機材を準備しておくこと。

・ 移動タンク貯蔵所から移動タンク貯蔵所への注入を行う場合は、注入口と注入ホースを緊結すること。ただし、注入される側のタンク容量が1,000リットル未満で、引火点が40度以上の危険物に限り、注入ホースの先端部に手動開閉装置を備えた注入ノズル(手動開閉装置を開放の状態で固定する装置を備えたものを除く。)により注入を行うことができる。

・ ホース等に残った危険物の処理は適切に行うこと。

・ 移動タンク貯蔵所から直接給油する形態では吹きこぼしが発生するおそれがあるので、吹きこぼし防止に細心の注意を払って給油すること。

イ 震災等により広範囲に渡って給油取扱所の再開の見込みが立たず、応急対応や被災地での生活を営む上で、移動タンク貯蔵所から直接ガソリンを給油する必要に迫られている場合においても、ガソリンは引火点が-40度以下と非常に低く、静電気等の火花でも容易に着火する危険性があることや、可燃性蒸気が空気より重く広範囲に拡大して滞留するおそれがある(200リットルの流出事故で最大30mの範囲まで可燃性蒸気密度が高くなる可能性がある)こと等、二次災害の発生防止が極めて重要であることから、次に掲げる危険性について十分な安全対策を実施し、それぞれに適切な対応が必要であること。

・ 給油時の漏れ・あふれ等による流出事故の発生危険性(給油取扱所の給油設備には、自動車タンク満量時の自動停止機能や安全に給油できる最大吐出量の設定等により、給油時の漏れ・あふれ等を防止している。)

・ 流出事故が発生した場合の火災発生危険性(給油取扱所では、万が一ガソリンが流出した場合においても、流出したガソリンや可燃性蒸気が滞留せず、かつ、漏れたガソリンを敷地外に流出させないための傾斜や排水溝、貯留設備があり、給油空地外に被害が拡大することを防止している。)

・ 火災が発生した場合の人的被害発生危険性(給油取扱所では給油に関係ない者の立ち入りが管理されている。さらに、震災時等においては、給油場所での給油希望者の行列などによる多数の利用者の集中が考えられる。)

・ 火災が発生した場合の周囲への延焼拡大危険性(給油取扱所では防火塀等の措置が講じられている。さらに、震災時等においては、周辺建物の損壊等による延焼拡大危険性の増大が考えられる。)

3 ガソリン等の運搬、貯蔵及び取扱い上の留意事項

震災時等における被災地でのガソリン等の運搬、貯蔵及び取扱い上の留意事項については【別紙1】を参考にすること。

第3 事務手続き

第2に基づく安全対策を講ずる場合の事務手続きは、震災時等の仮貯蔵・取扱いの手続きフロー【別紙2】を参考に次のとおり行うこと。

1 事前の手続き

(1) 事前協議

危険物の仮貯蔵等の形態に応じた安全対策や必要な資機材等の準備方法等の具体的な実施計画及び事務手続きについて、事前に消防本部予防課と協議したうえで『震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い実施計画書』(以下「実施計画書」という。)を作成し、消防長に提出すること。

【別添1―1】参照

(2) 実施計画の作成

ア 実施計画書の作成に係る留意事項

実施計画書は、実施計画書作成例(別添1―2)を参考に作成すること。併せて安全対策については、第2に規定する安全対策を講じること。

【別添1―2、別添2―1から2―3】参照

イ 実施計画書の添付書類

実施計画書には、仮貯蔵・仮取扱い実施予定場所の案内図、配置図、敷地見取図等を添付すること。また、提出者の住所、氏名等、必要な事項を記載すること。

(3) 実施計画書の提出

実施計画書は、正・副2部提出すること。提出者は、消防本部予防課にて受付後の副本を適切に保管すること。

消防本部予防課にあっては、提出された実施計画書を別表「震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い実施計画書一覧表」により管理すること。

2 震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱いの承認申請の手続き

震災時等における危険物の貯蔵・取扱いは、平常時と異なる環境下で行われることによる貯蔵取扱い中の事故のほか、余震等の更なる災害発生等、滞在的な危険を多く含んでいる。このことから二次災害の発生や被害拡大を防ぐために、危険要素を可能な限り排除し、平常時以上に貯蔵管理や取扱い方法に安全が要求されることを十分に認識し、以下により手続きをすること。

(1) 震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱いの承認申請の手続き

地震、台風、水火災等により甚大な被害が発生し、災害救助法(昭和22年法律第118号)が適用された場合、又はそれと同等の被害が発生したものと認められる場合において、災害復旧又は災害防御活動のため、通常の承認を行ういとまがないものとして、消防長が認めた場合に適用される。

(2) 電話等による仮貯蔵・仮取扱いの承認申請等

ア 電話等による仮貯蔵・仮取扱いの承認申請

実施計画書が消防長へ提出されている事業者等からの仮貯蔵・仮取扱いの承認申請については、電話又はファックス等(以下「電話等」という。)により行うことができる。

イ 電話等による仮貯蔵・仮取扱いの承認

仮貯蔵・仮取扱いの承認申請の内容と実施計画書の内容とを照合し、相違がないことを確認した場合は、速やかに口頭による承認がなされる。

ウ 現地調査の実施

消防本部予防課は、口頭による承認後、できる限り速やかに現地調査により安全確認を行い、必要に応じて的確な安全対策を指導する。

エ 危険物の仮貯蔵・仮取扱い承認申請書の提出等

口頭による承認を受けた仮貯蔵・仮取扱い申請者は、来庁等の対応が可能となった場合、速やかに「危険物仮貯蔵仮取扱い承認申請書」(危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)様式第1の2。以下「申請書」という。)を消防長あて2部提出すること。

オ 申請の受付等

消防長は、エの申請書の提出があったときは、速やかに審査を実施し、「危険物仮貯蔵・仮取扱い承認書」(吉川松伏消防組合危険物の規制に関する規則(平成2年吉川町松伏町消防組合規則第4号。以下「規則」という。)様式第1号)を申請者に交付すること。

(3) 実施計画書と異なる場合の対応

電話等による申請の内容が実施計画書と異なる場合、口頭の承認はできない場合がある。実施計画書の内容をよく確認した上で、申請すること。

(4) 承認を受けていない危険物の貯蔵・取扱いを覚知した場合

承認を受けず危険物の貯蔵・取扱いを実施することは、危険物事故による二次災害発生の危険性が高いことから絶対に行わないこと。万一覚知した場合、貯蔵・取扱いの中止を命令することがある。

(5) 実施計画書が提出されていない場合

実施計画書が提出されていない事業所等は、原則として通常の手続きを要する。

【別紙2】参照

3 仮貯蔵・仮取扱いの繰り返し承認

仮貯蔵・仮取扱いが繰り返し行われることは原則認められませんが、震災時等における災害復旧のため特に必要と認められる場合は再承認することができるものとする。この場合は、次の事項に留意すること。

(1) 再承認が必要と認められる場合においても、1回の承認の期間は10日間とし期間の延長は認められないこと。

(2) 10日を超える仮貯蔵・仮取扱いが認められる場合においては、既に承認を受けている期間の満了日前に、再度仮貯蔵・仮取扱いの承認申請を行うこと。

(3) 承認期間内であっても、仮貯蔵・仮取扱いを行う必要がなくなった場合は速やかに危険物を除去すること。

第4 危険物施設における臨時的な危険物の貯蔵・取扱い等

1 想定される臨時的な危険物の貯蔵・取扱い等

震災時等に想定される臨時的な危険物の貯蔵・取扱いについて、あらかじめ具体的に計画、整備し、許可内容との整合を図った場合、その範囲において危険物の仮貯蔵・仮取扱いの承認は必要ないものとする。この場合において、次の事項に留意し、対応すること。

(1) 許可内容への内包

事前に変更許可申請または軽微な変更の届出により、臨時的な危険物の代替機器等に関する位置、構造及び設備に関し、許可内容に内包すること。

(2) 予防規程への記載等

予防規程を定めなければならない危険物施設については、震災時等発生時における緊急対応、施設の応急点検、臨時的な危険物の貯蔵・取扱いの手順等について予防規程及びこれに基づくマニュアル等に規定すること。また、定期的に従業員に対する教育、訓練等を実施すること。

(3) 緊急時対応用資機材の用意

必要に応じて緊急用可搬式ポンプ、非常用発電機等の緊急時対応用の資機材を予め用意すること。

(4) 発災後の対応

発災後、事業者が予め取り決めていた危険物の貯蔵・取扱いを行う場合、二次災害を防止する観点から、以下の項目に従って対応すること。

ア 緊急対応

発災直後は、予防規程等に基づき施設の緊急停止や従業員の安全確保に努めること。

イ 施設の応急点検

施設の応急点検を行って被害状況を確認し、想定していた臨時的な危険物の貯蔵・取扱いが行える状況であるか否かを判断すること。

ウ 異常時の対応

臨時的な危険物の貯蔵・取扱いの際、流出や火災等が発生した場合は、速やかに危険物の貯蔵・取扱いを中止して必要な対応を行うとともに、消防機関に通報すること。

エ 臨時的な危険物の貯蔵・取扱いの停止

臨時的な危険物の貯蔵・取扱いの必要がなくなった場合は、速やかに危険物の当該貯蔵・取扱いを停止し、必要に応じて平常時の危険物の貯蔵・取扱いに移行すること。

【想定される危険物施設での臨時的な危険物の貯蔵・取扱いの例】

1 設備等が故障した場合の代替機器の使用

2 停電時における非常用電源及び手動機器の活用等

①給油取扱所での非常用発電機の使用

②給油取扱所での緊急用可搬式給油ポンプの使用

2 許可範囲外の臨時的な危険物の貯蔵・取扱いについて

あらかじめ許可内容に内包されない以下の事項等については、危険物の仮貯蔵・仮取扱いの承認または変更許可等の手続きを要するものとする。

(1) 許可を受けた危険物と異なる危険物を貯蔵・取扱いする場合

(2) 既設の設備等において、使用目的や使用方法が全く異なる利用をする場合

【危険物施設で危険物の仮貯蔵・仮取扱いの申請が必要な例】

①地下貯蔵タンクからの危険物の抜取り及びドラム缶等による貯蔵等

②屋外貯蔵タンクからの危険物の抜取り、屋外貯蔵タンク間の危険物の移送等

第5 その他

1 指定数量未満の危険物の臨時的な貯蔵・取扱い

指定数量未満の危険物を臨時的に貯蔵し、又は取扱う場合においては、危険物の仮貯蔵・仮取扱いの承認手続きは必要ないが、震災時等の火災危険性が高まっている状況下において、火災等の事故が発生し、二次災害が発生することを予防するため、本ガイドラインを参考に、適切に安全対策を講じること。

2 危険物の仮貯蔵・仮取扱いに係る手数料の免除措置

震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱いに係る申請手数料(以下「手数料」という。)は、申請目的や災害状況等を踏まえ、吉川松伏消防組合手数料条例(平成12年吉川松伏消防組合条例第5号)第4条第2号の規定により、手数料の免除措置を適用することが考えられます。

手数料の免除については、規則に基づき、次の事項に留意し、処理すること。

(1) 危険物仮貯蔵・仮取扱い手数料免除申請書の提出

口頭による承認を受けた仮貯蔵・仮取扱い申請書であって手数料の免除を受けようとするものは、来庁等の対応が可能となった場合の申請書の提出に併せて「危険物仮貯蔵・仮取扱い手数料免除申請書」(規則様式第1号の2)を提出すること。

【別添3―1】参照

(2) 手数料の免除の承認

手数料の免除の承認は、「危険物仮貯蔵・仮取扱い手数料免除決定通知書」(規則様式第1号の3)により申請者に通知するものとする。

【別添3―2】参照

3 参考資料等

(1) 【別紙1】震災時等における被災地でのガソリン等の運搬、貯蔵及び取扱い上の留意事項

(2) 【別紙2】平常時及び震災時等の仮貯蔵・仮取扱いの手続きフロー

(3) 【別添1―1】震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い実施計画書

(4) 【別添1―2】震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い実施計画書作成例

(5) 【別添2―1から2―3まで】仮貯蔵・仮取扱い実施計画書作成例

(6) 【別添3―1】危険物仮貯蔵・仮取扱い手数料免除申請書

(7) 【別添3―2】危険物仮貯蔵・仮取扱い手数料免除決定通知書

(令和3年告示第6号)

この告示は、令和3年4月1日から施行する。

(令和3年告示第18号)

この告示は、令和4年1月1日から施行する。

別紙1

震災時等における被災地でのガソリン等の運搬、貯蔵及び取扱い上の留意事項

【ガソリン等の火災危険性を踏まえた貯蔵・取扱い時の留意事項】

〈ガソリンの特性〉

・ 引火点は-40℃程度と低く、極めて引火しやすい。

・ ガソリン蒸気は空気より約3~4倍重いので、低所に滞留しやすい。

・ 電気の不良導体であるため、流動等の際に静電気を発生しやすい。

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・ ガソリンを取り扱っている周辺で火気や火花を発する機械器具等を用いないでください。

ガソリンを取り扱っている場所から1m離れた場所に置かれた洗濯機で火災に至った事例や、火気や火花がなくても人体に蓄積された静電気で火災に至った事例が報告されており、ガソリンを取り扱う場合は細心の注意を払わないと容易に火災に至る危険性があります。

・ 静電気による着火を防止するためには、金属製容器で貯蔵するとともに、地面に直接置くなど静電気の蓄積を防ぐ必要があるほか、移し替えは流動時の静電気の蓄積を防ぐため、ガソリンに適用した配管で行う必要があります。

・ ガソリン容器からガソリン蒸気が流出しないように、容器は密栓するとともに、ガソリンの貯蔵や取扱いを行う場所は火気や高温部から離れた直射日光の当たらない通風、換気の良い場所としてください。

特に夏期においてはガソリン温度が上がってガソリン蒸気圧が高くなる可能性があることに留意しましょう。

・ 取扱いの際には、開口前のエア抜きの操作等、取扱説明書等に書かれた容器の操作方法に従い、こぼれ・あふれ等がないよう細心の注意を払ってください。

万一流出させてしまった場合には少量であっても回収・除去を行うとともに周囲の火気使用禁止や立入りの制限等が必要です。必要に応じて消火器を準備しておきましょう。また、衣服や身体に付着した場合は、直ちに衣服を脱いで可能であれば大量の水と石けんで洗い流しましょう。

・ ガソリン使用機器の取扱説明書等に記載された安全上の留意事項を厳守し、特にエンジン稼働中の給油は絶対に行わないようにしましょう。

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ガソリンの貯蔵に適した容器の例

(金属製容器であることが必要)

ガソリンの貯蔵に適さない容器の例

(樹脂製容器は火災危険性が高い)

〈灯油・軽油の特性〉

・ 引火点は40℃~45℃程度であり、引火しやすい。

・ 灯油や軽油の蒸気は空気より約4~5倍重いので、低所に滞留しやすい。

・ 流動等の際に静電気を発生しやすい。

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・ 灯油や軽油を取り扱っている周辺で火気や火花を発する機械器具を用いないでください。

灯油や軽油から発生する可燃性蒸気の量はガソリンより少ないため、ガソリンと比べれば火災危険性は低いものの灯油や軽油の近くに火気等があれば火災に至る危険性があることには変わりなく、灯油や軽油を取り扱う場合は、ガソリンと同様に細心の注意を払う必要があります。

・ 常温において、灯油用のポリエチレンタンクや樹脂製の灯油用給油ポンプの使用は問題ありませんが、液温が高くなる(40℃以上)環境下で用いる場合は、灯油や軽油に蓄積された静電気で火災に至る危険性があることに留意する必要があります。

ガソリンほどではありませんが、灯油や軽油も流動等の際に静電気を発生しやすい性質があります。また、灯油や軽油も蒸気と空気の混合率が一定範囲内(1.0vol%~6.0vol%と広範囲)で燃えます。

・ 灯油や軽油の容器から灯油や軽油の蒸気が流出しないように、容器は密栓するとともに、灯油や軽油の貯蔵や取扱いを行う場所は通風、換気を良くしましょう。

【自動車のガソリン等を抜き取って使用することは危険です】

ガソリンの引火点は-40℃程度と非常に低く、ガソリンスタンドにおいても静電気による火災が発生する事例が発生しています。

上の図は自動車に給油しようとした際に人体に帯電した静電気により火災が発生した事例であり、下の図はオイルチェンジャーを用いて自動車のガソリンを抜いていたところ火災に至った事例です。

被災地において、仮に樹脂製の灯油用給油ポンプを用いて自動車からガソリンを抜き取った場合、ガソリン自身が帯電してしまい、火災に至る危険性はオイルチェンジャー以上に高く、非常に危険です。二次災害を防止する観点からも、控えてください。

事故概要

セルフ給油取扱所で顧客が車両にガソリンを給油中に車両の給油口付近から出火したもの。炎が上がり、慌てて給油ノズルを給油口から抜き取ったためこぼれたガソリンと車両ボディー若干を焼損したもの。

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事故概要

ハイオク仕様の普通乗用車にレギュラーガソリン53l誤給油してしまった。そこでオイルチェンジャーを使用してレギュラーガソリンを金属製の20l容器に移し替えていたところ、ガソリンに引火した。

なお、粉末消火器を使用して消火作業に従事した従業員1名が左下腿と左手背部に熱傷を負った。

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【ガソリン等の燃料を容器で運搬する場合等の留意事項】

ガソリンの引火点は-40℃程度と非常に低く、静電気等でも容易に火災が発生することから、金属製の容器(ガソリン携行缶やドラム缶等)で運搬する必要がありますが、ガソリン等を容器で運搬する場合には消防法令上、危険物取扱者が乗車することまでは求められていません(もちろん、防火上の観点から危険物取扱者が乗車されることは望ましいことではあります)。

また、ガソリン等を車両で運搬する場合、ガソリン等を収納した容器の運搬個数に制限はありません。ただし、乗用車(乗用の車室内に貨物を積むものを含む)によりガソリン等を運搬する場合は、22リットル以下の金属製の容器とする必要があります。

さらに、運搬中に危険物が落下・転倒することがないように積載すること、3メートル以上積み重ねて運ばないこと等の防火上の対策は講じていただく必要があります。

なお、大量のガソリン等(ガソリンの場合は200リットル以上、灯油又は軽油の場合は1,000リットル以上)を運搬する場合は事故時の火災危険性が高いことから、消火器を設置するとともに、周囲に大量の危険物を運搬していることが容易にわかるように「危」と記した標識を掲げる必要があります。

当該車両が大量の危険物を運搬していることを周囲に周知し注意喚起するという制度趣旨を達成するものであれば、簡易な標識でも可能です。

一方、タンクローリーでガソリン等を大量に移送(運搬)する場合、一度事故が発生すると火災に至る危険性が高く、また、火災時には周辺施設も含めて大きな被害が発生する危険性があることから、指定数量以上の危険物を移送するタンクローリーには危険物取扱者が乗車していただく必要があります。

この場合の危険物取扱者とは、甲種危険物取扱者、乙種危険物取扱者(4類)又は丙種危険物取扱者を指しますが、毎年約14万人の方がタンクローリーで移送(運搬)する際に必要とされる有資格者となっています。

前述の火災危険性をご理解いただき、有資格者が乗車したタンクローリーで安全に大量のガソリン等を運んでいただけるようお願いします。

なお、タンクローリーの運転者自身が危険物取扱者である場合は、必ずしも別に危険物取扱者を乗車させる必要はありません。

【石油ストーブ等の灯油がなくなってもガソリンを使用することは危険です】

ガソリンの引火点は-40℃程度と非常に低く、静電気等でも容易に火災が発生します。一方、灯油の引火点は40℃程度であり、火災危険性は高いもののガソリンほどではありません。

石油ストーブや石油ファンヒーター等は、あくまでも灯油を燃料として用いることを前提に作られているため、仮に灯油がなくなった場合でも、灯油の代わりにガソリンを給油すると火災が発生する危険性が非常に高く、しかも、石油ストーブ等は建物内で用いる場合が大半であることから、建物火災に発展する危険性が高いので、絶対に行わないようにしてください。

別紙2

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平常時の危険物仮貯蔵・仮取扱いの申請は、申請から承認まで7日を要します。

申請に係る事前の相談を含めれば更に承認まで期間を要します。

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事前に震災時等における実施計画書を提出しておくことで、震災時等に必要となった申請を電話等で行うことができ、申請から承認(口頭)が即日可能になります。これにより、緊急に必要となった危険物の貯蔵等が迅速に行うことができ、スムーズな災害復旧を図ることができます。ただし、申請書は後日改めて提出する必要があります。この場合、震災等の状況により申請手数料の免除が適用される場合があります。

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別添2―1

仮貯蔵・仮取扱い実施計画書【作成例1】

ドラム缶等による燃料の貯蔵及び取扱い

1 目的

震災等により被災地においてガソリン等の燃料が不足した場合に災害復興支援車両等への燃料補給を行うことを目的とし、危険物施設以外の場所での一時的な貯蔵やドラム缶から手動ポンプを用いて金属製携行缶への詰め替えを行い、仮設の燃料供給拠点として利用するために必要な事項を予め計画するものです。

2 仮貯蔵・仮取扱いをする場所

○○市(町)○○丁目○○番○○号○○工場東側空地(コンクリート舗装)

3 仮貯蔵・仮取扱いに使用する部分の面積

約360m2(15m×24m)

4 詳細レイアウト

別紙のとおり

5 仮貯蔵・仮取扱いをする危険物の類・品名・数量

第4類第1石油類(ガソリン)3,000リットル

6 指定数量の倍数

15倍

7 貯蔵及び取扱いの方法

(1) 200リットルの金属製容器(ドラム缶)により貯蔵する。

(2) 保有空地を6メートル確保する。

(3) 貯蔵場所と取扱い場所に6メートルの離隔距離をとる。

(4) 高温になることを避けるため、通気性を確保した日除けを貯蔵場所に設ける。また、取扱場所において危険物が長時間炎天下さらされないようにする。

(5) 第5種消火設備10型粉末消火器3本を設置する。

(6) 標識、掲示板を設置し関係者に次の事項について注意喚起を行う。

「危険物仮貯蔵・仮取扱所」、「危険物の類・品名・数量(倍数)」、「火気厳禁」

8 安全対策

(1) ドラム缶本体、給油に使用するドラムポンプ等のアースを確保する。

(2) 危険物の取扱いは、原則として危険物取扱者免状保有者が行う。

(3) 危険物を取扱う者は、静電安全靴を着用する。

9 管理状況

(1) 保有空地の周囲にバリケード等を設け、空地を確保する。

(2) 敷地の出入り管理を徹底し、いたずら・盗難を防止する。

(3) 作業前と作業後に点検を行い、その結果を記録する。

10 その他必要な事項

金属製携行缶による給油は、この場所以外では行わない。

仮貯蔵・仮取扱い実施計画書(ドラム缶等による燃料の貯蔵及び取扱い)

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別添2―2

仮貯蔵・仮取扱い実施計画【作成例2】

危険物を収納する設備等からの危険物の抜取り

1 目的

震災等により被災した変圧器等を修繕、点検するために必要な事項を予め計画するものです。

2 仮貯蔵・仮取扱いをする場所

○○市(町)○○丁目○○番地○○○○工場南側空地

3 仮貯蔵・仮取扱いに使用する部分の面積

約120m2(12m×10m)

4 詳細レイアウト

別紙のとおり

5 仮貯蔵・仮取扱いをする危険物の類・品名・数量

第4類第3石油類(絶縁油)10,000リットル

6 指定数量の倍数 5倍

7 貯蔵及び取扱いの方法

(1) 変圧器の修繕、点検のため、変圧器内部の絶縁油を一旦抜取り、仮設タンク等で貯蔵し、内部修繕・点検が終了後に変圧器内部に再度注油する。

(2) 保有空地を3メートル確保する。

(3) 第5種消火設備10型粉末消火器3本を設置する。

(4) 標識、掲示板を設置し関係者に次の事項について注意喚起を行う。

「危険物仮貯蔵・仮取扱所」、「危険物の類・品名・数量(倍数)」、「火気厳禁」

8 安全対策

(1) 変圧器等、ポンプ、仮設タンクのアースを確保する。

(2) 仮設の防油堤を設置し、漏えい防止シートの敷設等の流出防止対策を講ずるとともに、配管の接合部からの流出防止対策としてオイルパンを設置する。

(3) 1カ所の取扱い場所で同時に複数の設備からの抜き出しは行わない。

(4) 危険物の取扱いは原則として危険物取扱者免状保有者が行う。

9 管理状況

(1) 保有空地の周囲にバリケード等を設け、空地を確保する。

(2) 敷地の出入り管理を徹底し、いたずら・盗難を防止する。

(3) 作業前と作業後に点検を行い、その結果を記録する。

10 その他必要な事項

危険物の抜き出し等を行った変圧器の数及び危険物の数量を記録し、事後速やかに報告する。

仮貯蔵・仮取扱い実施計画書(危険物を収納する設備等から危険物の抜き取りの安全対策の例)

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別添2―3

仮貯蔵・仮取扱い実施計画書【作成例3】

移動タンク貯蔵所等による軽油の給油及び注油等

1 目的

震災等により被災地において災害復興のための重機への燃料補給及びドラム缶への注油を行うために必要な事項を予め計画するものです。

2 仮貯蔵・仮取扱いをする場所

○○市(町)○○丁目○○○○番地○○号○○工場西側空地

3 仮貯蔵・仮取扱いに使用する部分の面積

約2,000m2(40m×50m)

4 詳細レイアウト

別紙のとおり

5 仮貯蔵・仮取扱いをする危険物の類・品名・数量

第4類第2石油類(軽油) 1日最大20,000リットル

6 指定数量の倍数 20倍

7 貯蔵及び取扱いの方法

(1) 移動タンク貯蔵所から直接重機への給油及びドラム缶への詰替えを行う(詰め替えたドラム缶は別途確保する貯蔵場所へ速やかに移動させる)

(2) 保有空地を6メートル確保する。

(3) 高温になることをさけるため、必要に応じて通気性を確保した日除けを貯蔵場所に設ける。

(4) 第5種消火設備10型粉末消火設備3本を設置する。

(5) 標識、掲示板を設置し関係者に次の事項について注意喚起を行う。

「危険物仮貯蔵・仮取扱所」、「危険物の類・品名・数量(倍数)」、「火気厳禁」

8 安全対策

(1) ドラム缶本体のアースを確保する。

(2) 吸着マット等危険物の流出等の応急資機材を準備する。

(3) 危険物の取扱いは、原則として危険物取扱者免状保有者が行う。

9 管理状況

(1) 保有空地の周囲にバリケード等を設け、空地を確保する。

(2) 敷地の出入り管理を徹底し、いたずら・盗難を防止する。

(3) 作業前と作業後に点検を行い、その結果を記録する。

10 その他必要な事項

移動タンク貯蔵所への注油は別の場所で行う。

仮貯蔵・仮取扱い実施計画書(移動タンク貯蔵所等による軽油の給油及び注油等の安全対策の例)

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震災時等における危険物の仮貯蔵・仮取扱い等に関するガイドライン

令和2年3月26日 告示第5号

(令和4年1月1日施行)

体系情報
第7編 務/第1章
沿革情報
令和2年3月26日 告示第5号
令和3年3月11日 告示第6号
令和3年12月20日 告示第18号